医療がもっと身近になれば、介護業界は明るくなる

医療がもっと身近になれば、介護業界は明るくなる

AoyagiBlog

持病を持つことも多い高齢者たちを支える介護施設において、医療的な知識は非常に重要。医療知識へのアクセスで一番困っていて、しかもデジタル化によって課題解決できるのは介護施設だ、と思ったんです。

介護施設の「病院化」が進んでいる

高齢化が進むということは、病気になりやすい人も増えるということで、さらに言えばそれは国の医療費が増加していくということになります。この医療費の削減のために、国は病院に対し、患者を早期に退院させるよう求めるようになりました。

厚生労働省の調査によると、65歳以上の平均入院日数は30年間で半分以下になったとのこと。今までなら入院して治療を続けていたような高齢者患者たちが、介護の現場に押し寄せているわけです。介護施設での要介護度は上昇傾向にあり、どんどん「病院化」が進んでいます。

一方で僕は勤務医時代、すごく軽症またはすぐ入院になるほどの重症で来院することの多い高齢者を目の前にして、「なぜ介護施設から来る患者さんは、極端な状態で来院するのだろう?」という疑問を抱いていました。

軽症で病院に連れて来るのは介護スタッフさんにとっても負担が大きいだろうし、重症で入院になるのも望まぬ状態のはず。どうしてこんなことが起きるのかと考えていろいろ調べていくと、原因のひとつは「医療にアクセスする難しさ」だとわかりました。医療サポートをより必要とする施設利用者が増えているのに対して、介護施設内での医療体制は十分に整っていなかったのです。

介護施設の嘱託医は週に一度、半日ほどの訪問が中心で、発症時に緊急で相談できる体制はありません。さらに医師の専門領域外の症状だった場合、対応が難しいこともあります。

それをカバーするのは施設の看護師。何か起きた時にすぐ医療的な判断をしてくれる心強い存在ですが、いざという時が訪れるのは日中の勤務時間帯だけではありません。フォローのための夜間待機を求められることも多く、介護施設看護師の71%が負担に感じているといい、離職理由にもなっています。

介護スタッフにとっても、夜中に寝ている看護師を起こすのは気が引けてしまうし、かといってインターネットで調べたような信憑性の薄い医療知識を現場で使っていいのか……。こんな困った環境が、軽症での通院や症状の悪化、救急搬送の発生などを招いていたのです。

医療知識を「アクセスするもの」から「すぐそばにあるもの」へ

だとすると、いつでも気軽に相談できる医療従事者や、信憑性のあるデータがすぐそばにあればいい。困った時にすぐに使える「医療ツール」が身近なものになればいいと思いました。そこで僕が立ち上げた事業が、医療相談と夜間オンコール代行です。

日中医療相談ではオンラインで医師とつながることができ、内科や皮膚科を含む全26科に対応。「専門外だからわからない」ということにはなりませんし、スクリーニングの実施によって通院の負担も軽減されます。

夜間オンコール代行では施設看護師の代わりに専門のオンコールナースたちが、施設の方から電話が来るのを待っています。オンコールナースたちは蓄積された10,000件以上の豊富なオンコール事例を元に適切に判断を行うほか、レポートをお出ししての知見の言語化と共有を進めています。

導入先の施設の方からは、残業代が半減した、ストレスが軽減された、離職が減った、求人や通院に労力を割いていたが余力ができて収益が増えた……といった多くの嬉しい報告があり、いい循環を産んでいるなと感じます。

こんなふうに、これからももっと医療を身近な存在にしていきたいと思っています。なんとかアクセスするものではなく、すぐそばにあるものになれば、介護施設の医療への不安はなくなっていくと思うんです。

手紙がメールになって、すぐ届くようになったような。図書館がブラウザになって、家にいながらいろいろな情報にアクセスできるようになったような。そんな身軽さで、医療もデジタルツールにしていきたい。

そして介護と医療が合わさった部分の知見がデータとしてどんどん貯まっていけば、すでにどこかで解決法が見つかっていることで悩む必要はなくなります。日本中、世界中の知見を共有して一気に悩みを解決し、介護業界全体として前を向いていきたい。

いつでも医療にアクセスできる世界へ。そうしてもたらされた安心で、多くの人を笑顔にしたいと思って日々頑張っています。

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